7ヶ月かけて、直せるところは全部直した車でした。
足回りのゴムは全交換。車高調も入れた。クラッチはオーバーホール。エンジンマウントも替えた。シートは自分で張り替えた。
その車を、車屋に査定に出しました。
びっくりするくらい、安かったです。

この記事は、2023年に私がユーノス ロードスター(NA6CE)をメルカリで売ったときの記録です。
結論から書くと、買取店の査定と、実際に売れた金額は、まるで別の世界でした。手をかけた旧車を手放そうとしている方には、たぶん役に立つ話だと思います。
きっかけは、アバルト124スパイダーでした
そもそも売る気などありませんでした。
事の発端は、アバルト124スパイダーという車の存在を知ってしまったことです。
お恥ずかしい話ですが、そんな車があることを全然知りませんでした。マツダのロードスター(ND)をベースに、フィアットが124スパイダーとして仕立て、それをアバルトがチューンした車です。
何と言っても、かっこいい。
思わず一目惚れしてしまいました。しかも運の悪いことに(良いことに、と言うべきか)、手頃な1台が実際に見つかってしまったのです。
こうなると、頭の中は乗り換えの算段でいっぱいになります。元手はもちろん、手元のNAロードスターです。
乗ってみたら、クラッチが鬼のように重かった
ところが、話は2つの理由で頓挫します。
ひとつめは、実際に乗ってみて分かったことでした。
クラッチが、鬼のように重いのです。
スポーツカーとして正しい味付けなのだと思います。ただ私が欲しかったのは、週末だけ乗る特別な車ではなく、普段の足として使える車でした。通勤で毎日渋滞に嵌まることを考えると、この左足は少々きつい。
一目惚れの熱が、少し冷めました。
車は写真とスペックで惚れますが、乗ると必ず現実が出てきます。これは買わずに済んだ、良い試乗でした。
そして、査定額を見て固まった
ふたつめの理由が、本題です。
元手にするつもりで、NAを車屋に査定に出しました。この7ヶ月でやってきたのは、こういう内容です。
- エアフロメーター交換(走行中のエンジン停止で入院)
- フルブッシュ交換(足回りのゴムを全部)
- 車高調をTEIN FlexZへ/スタビリンク交換
- クラッチのオーバーホール
- エンジンマウント交換
- エアコン修理
- シートを自分で張り替え(運転席・助手席とも)
- 内装の清掃・レストア、スペアキー作成
- BBSホイール、のちにTE37 SONIC SL+ル・マンLM704

これだけやった車の査定額が、びっくりするくらい安かった。
金額はここには書きませんが、乗り換えの元手として当てにしていた計算が、根本から崩れる程度には安かった、とだけ言っておきます。
買取店は「整備した分」を見てくれない
あとから考えると、当たり前の話ではあります。
買取店が付ける値段の元になるのは、基本的に業者間オークションでいくらで捌けるかです。年式、走行距離、車種、状態。この4つで機械的に相場が決まります。
そこに、こういう項目はありません。
- 足回りのブッシュを全部替えてある
- クラッチをオーバーホールしてある
- エアフロを交換して、持病が消えている
- シートを張り替えてある
買う側の業者にとっては、これらは「そのぶん高く売れる材料」ではないのでしょう。30年前の車という一点で、値は先に決まってしまう。
逆に言えば、この価値が分かるのは、その車を探している個人だけということになります。
何の気なしに、メルカリに出してみた
乗り換えは、この時点でほぼ諦めていました。
それでも未練が残っていて、本当に何の気なしに、メルカリに出品してみたのです。
正直、冷やかしのつもりでした。車がフリマアプリで売れるという実感が、まるでなかったからです。
結果はこうでした。
想像以上の問い合わせが来て、それなりの金額で、売れてしまいました。

買取店の査定と比べて、という言い方をすると生々しいので控えますが、同じ車に、まったく違う値段が付いたということです。
手をかけた内容を、そのまま書いて出せたのが大きかったのだと思います。ブッシュを全部替えた、クラッチをOHした、エアフロを替えた。業者の査定表には1行も載らない情報が、探している人には全部刺さった。
買ったのは、千葉県の22歳の整備士でした
私のNAは、はるか遠い千葉県まで行きました。
引き取っていったのは、22歳の、マツダの整備士のお兄ちゃんです。
めちゃくちゃ喜んでくれました。そして、こう言っていました。
「一生乗ります」
いやいや、22歳のあなたが一生乗るには、ちと無理があるのでは——というのが、そのときの正直な感想でした。
ただ、あとで冷静に考えると、案外そうでもないかもしれません。
足回りはほぼ新品です。クラッチも開けたばかり。そしてこのエンジンは、オーバーホールなしで50万km もったという話を聞いたことがあります。しかも本人はマツダの整備士。自分で診て、自分で直せる。
条件としては、私よりよほど恵まれています。あの7ヶ月は、結果として次のオーナーへの引き継ぎ作業だったことになります。
それはそれで、悪くない終わり方でした。
旧車を売るなら、査定だけで決めないほうがいい
この経験から言えることは、はっきりしています。
- 手をかけた旧車の価値は、買取店の査定表には載らない。年式と走行距離で先に値が決まってしまう
- その価値が分かるのは、その車を探している個人だけ。だから個人売買のほうが高く付くことがある
- 整備の記録は、そのまま売り文句になる。いつ、どこを、何に替えたか。明細と写真を残しておくと効きます
- 「売れるわけがない」と決めつけない。私も冷やかしのつもりで出しました
もちろん、個人売買には手間もリスクもあります。名義変更や書類のやりとり、遠方への引き渡し。買取店に持っていけば、そのあたりは全部やってもらえます。その手間賃が査定額に含まれている、という見方もできるでしょう。
ただ、手をかけた旧車に関しては、その差が大きすぎるというのが私の実感です。少なくとも、比べてみる価値はあります。
その後、代わりにやってきたのがこれです
124スパイダーは諦めましたが、NAが売れてしまった以上、足がありません。
そこで代わりにやってきたのが、このNDでした。

乗ってみると、NAで不満だった点がほぼ解消されていました。NAで知った走る楽しさはそのままに、剛性もパワーも経済性も現代の水準になっている。
ただ、それが分かったのはNAで7ヶ月やったからです。最初からNDに乗っていたら、たぶん何とも思わなかったでしょう。
その7ヶ月に何があったかは、別の記事にまとめています。パンク、走行中のエンジン停止、R12のエアコン、車速パルスが出ないナビ。旧車を買うとどうなるのか、起きた順番のまま書きました。
あわせてどうぞ。
