アバルト124スパイダーの中古は高騰した|200万円で買わなかった日の記録

ヤフオクに出ていたアバルト124スパイダー(赤)を斜め前から見たところ

2023年10月、私はアバルト124スパイダーを見に、名古屋まで行きました。

ヤフオクに出ていた個体です。出品者は名古屋のお医者さん。値段は200万円を切っていて、相場よりずいぶん安い。現車を見て、試乗までさせてもらいました。

🔴 結局、買いませんでした。そして、この日が30年もののロードスターを手放すきっかけになりました。

ヤフオクに出ていたアバルト124スパイダー(赤)を斜め前から見たところ
これが現車。ボンネットにサソリのデカールが入っている
目次

NAロードスターで、名古屋まで見に行った

足に使ったのは、当時乗っていた1990年代のユーノス ロードスター(NA6CE)です。

名古屋まで乗って行ったNAロードスター
見に行った日のNA。30年前の車で、現代のオープンカーを見に行った

いま振り返ると、なかなかの絵面です。30年前のオープンカーに乗って、その孫みたいな車を見に行っている。アバルト124スパイダーは、ND型ロードスターと同じ工場で作られた兄弟車です。

その時点で、私のNAは1年近く手を入れ続けた状態でした。エンジンが止まって入院し、幌を替え、ナビを入れ、パンクし、エアコンを直し。ようやく普通に走るようになった車で、次の車を見に行っていたことになります。

200万円を切っていた|ただし距離は10万km超え

出ていた値段は200万円を切っていました。当時の相場からすると、はっきり安い。

安いには理由がありました。走行距離が10万kmを超えていたのです。

ここは人によって受け取り方が分かれるところだと思います。今どきの車の10万kmは、昔の10万kmとは違います。一方で、輸入車で10万km超えとなると、身構える人は多い。その差が、そのまま値段に出ていました。

アバルト124スパイダーを斜め後ろから見たところ
ダックテールと黒いホイール。幌は閉じたまま見せてもらった

現車は、写真で見るより程度が良く見えました。距離を聞いていなければ、そこまで走っているとは思わなかったと思います。

🔴 なぜ個人売買だったのか|査定はこの金額より安かった

気になったので、出品者の方に聞いてみました。「査定に出したら、この金額より安かったんですか」と。

答えは「そうです」でした。

つまり、業者に売れば200万円よりさらに下がる。だから手間をかけて、ヤフオクに自分で出していた。私が「相場より安い」と思った値段は、業者査定より高い値段だったわけです。

🔴 これは、あとで私自身が通る道でもありました。私もこのNAロードスターを、買取店ではなくメルカリで売っています。理由は同じで、買取店が値を付けてくれなかったからです。

手をかけた車、趣味性の高い車、距離を走った輸入車。このあたりは、業者の査定表と、実際に欲しい人が出す金額が、大きくずれます。売る側が個人売買に流れるのは自然なことでした。

買う側から見れば、そのズレの分だけ安く買えるということでもあります。私が見つけた「相場より安い」は、そういう構造から出てきた値段でした。

近所を一周させてもらった|クラッチが鬼のように重かった

ありがたいことに、試乗させてもらえました。近所を一周です。

アバルト124スパイダーの運転席(サソリのステアリング・6速MT)
右ハンドルのMT。ステアリングの真ん中にサソリがいる

乗って、いちばん驚いたのはここでした。

🔴 クラッチが、鬼のように重い。

直前まで乗っていたのがNAロードスターです。あれは軽い。踏んだ感触が、そもそも別の乗り物でした。

もちろん、慣れの問題はあると思います。毎日乗っていれば、足がその重さを覚える。それでも、その場で私が思ったのは「これで通勤するのはつらいんじゃないか」ということでした。

当時、車は通勤に使っていました。週末に楽しむ車ではなく、毎朝乗る車として考えていたので、この一点が引っかかりました。

アバルト124スパイダーの側面
1.4リッターのターボ。NAとは、同じオープンカーでも別の乗り物だった

もう一つ書いておくと、のちに私が買うND型のロードスターとも、全く違う車でした。ベースは同じでも、エンジンが違い、味付けが違い、乗り味が違う。「NDの兄弟車」と一言で片付けられる車ではありませんでした。

同じ「ロードスターの兄弟」でも、NAとは別の乗り物だった

クラッチ以外にも、乗って分かったことがあります。そもそも成り立ちが違う車でした。

  • 私のNAは1.6リッターの自然吸気。カタログ上は120馬力ほど
  • 124スパイダーは1.4リッターのターボ。排気量は小さいのに、力の出方がまるで違う

NAは、回さないと進みません。低い回転では力がなく、そのかわり踏んだ量と加速が素直に繋がります。30年前の1.6リッターは、そういう乗り方をする車です。

ターボは、そこが違います。低い回転から力が出る。楽なのですが、「自分でエンジンを回している」という感じは薄くなります。どちらが良いという話ではなく、別のものです。

車体の造りも違いました。ドアを閉めた音、内装の手触り、シートの座り心地。30年分の進歩が、乗り込んだ瞬間に分かります。私のNAは、内張りを自分で替え、ダッシュボードを自分で塗り、幌を自分で載せ替えた車です。そこと比べれば、当たり前の話でした。

🔴 その「当たり前」を、体で確かめてしまったのが、この日でした。

現車を見に行くと、写真では分からないことが分かる

結果として買わなかったわけですが、名古屋まで行ったこと自体は、無駄ではなかったと思っています。

個人売買で車を買うとき、写真と説明文だけで決めるのは、やはり無理があります。この日に分かったのは、こういうことでした。

  • 写真より程度が良く見えた。10万km超えと聞いていなければ、そうは思わなかった
  • クラッチの重さは、乗らなければ絶対に分からない。スペック表には出てこない
  • 出品者がどういう人かが分かる。なぜ手放すのか、どう乗ってきたのかを、直接聞ける

3つめは、値段以上に大きいと思いました。査定の話をしてくれたのも、実際に会って話したからです。ネットの画面越しには出てこない情報でした。

🔴 買わなかった本当の理由は、クラッチではなかった

ここまで読むと「クラッチが重いから見送った」という話に見えると思います。違います。

踏みとどまった理由は、もっと単純でした。

🔴 嫁さんに、何も言っていなかったからです。

200万円近い買い物を、その場で決める。しかも家に何の相談もしていない。さすがに、そこで手を挙げることには躊躇しました。

クラッチの重さは、その躊躇に理屈を与えてくれる材料だったのかもしれません。「通勤がつらそうだ」と思えば、決めない自分に説明が付きます。

買い物というのは、たぶんそういうものです。決められない理由を先に見つけて、後から性能の話にする。

アバルト124スパイダーは高騰した|あの値段ではもう買えない

あれから時間が経ちました。正直に書きます。

🔴 すぐに手放すことになったとしても、一度、乗ってみたかった。

それが今の気持ちです。クラッチが重くて通勤に向かなかったとしても、それはそれで「乗ってみて分かったこと」になったはずでした。乗らなかったので、何も分からないまま残っています。

そしてもう一つ。

ときどきカーセンサーなどで、アバルト124スパイダーの相場を見ることがあります。あの時の価格では、もう買えない車になっていました。

生産期間が短く、玉数が少ない。オープンのMTで、そこそこ走る。そういう車は、時間が経つほど下がりにくくなります。「安いと思ったあの値段」は、実際に安かったわけです。

🔴 10万km超えで200万円を切る個体は、いま探しても、まず出てきません。距離が理由で安く出ていた車が、その距離ごと値上がりした。中古車の相場というのは、そういう動き方をします。

もし当時の私に一言だけ伝えられるなら、「その値段は、二度と見ない」と言うと思います。もっとも、それを聞いても嫁さんに黙って200万円を出したかというと、たぶん出さなかったのですが。

この日が、ロードスターを手放すきっかけになった

買わずに帰りましたが、この日を境に、私の中で何かが決まりました。

それまでは、NAロードスターを直しながら乗り続けるつもりでいました。次から次に出てくる不具合を一つずつ潰して、ようやく普通に走るところまで来ていたのです。

けれど、現代のオープンカーに乗ってしまった。そして「次の車」という考えが、頭の中に居座りました。

その年の秋、私はNAロードスターを手放しました。買取店ではなく、メルカリでの個人売買です。あの日、名古屋で出品者の方から聞いた話と、同じ道を通ったことになります。

🔴 買わなかった車が、乗っていた車を手放させた。あの日、名古屋まで走らせなければ、私はもう少し長くNAに乗っていたと思います。

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