錆びたボルトの外し方とボルトの固着|掴む工具もバーナーも効かなかった

積載車の荷台に置かれたNAロードスターのECUと、錆びた取り付けステー

ユーノス ロードスター Vスペシャル(NA6CE)で、ECU(エンジンコンピューター)を対策品に交換しました。

作業自体は、外して差し替えるだけです。難しいことは何もありません。それなのに、丸一日かかりました。時間を食ったのはECUではなく、それを覆っているカバーを止めている、たった数本のボルトです。

🔴 そして、その日のうちに元へ戻しました。

半日かけてボルトを壊して、載せ替えて、走って、戻した。結局この車は、最後まで元のECUで走り、そのまま手放しています。先に結末を書いておきます。

取り外したNAロードスターのECU(B63H・DENSO製)と、錆びた助手席足元の床
外したECU。B63H、DENSO、MADE IN JAPAN。下に転がっているのはボルトと格闘したバイスプライヤ
目次

なぜECUを換えたのか|その3週間前に、路上で止まっている

先に、ここに至るまでを書いておきます。

この作業の3週間ほど前、国道を走っていて、突然エンジンが止まりました。セルは回るのに、かからない。惰性で側道に寄せて、ロードサービスを呼びました。

レッカーで近所のロードスター専門店へ。そこから2週間の入院です。

専門店の前に置かれた、タン色の幌のNAロードスター
入院中の1枚。まだタン色のクロス幌が載っている

店では、原因を1つずつ潰していきました。セルが回るのにかからないとなれば、燃料か、点火か、それを制御している側か。店は燃料ポンプとECUを、テスト用に用意していました。怪しいものを実際に別の個体へ差し替えて、切り分けるためです。

当時もらった連絡には、こう書かれていました。

ロードスターですが 中古のエアフロメーター取付 テスト走行で問題なく走ることができました。20分のアイドリングの後 約20分15km走行で エンジンは止まることがありませんでした。ポンプとコンピューターも点検用に用意しましたが原因はエアフロメーターのようです。

結論はエアフロメーターの故障でした。ECUではありません。ついでに、納車時からあった「クラッチを切ると回転が落ちてエンストする」症状も消えました。

NAロードスターのエンジンルームに並んだ新旧のエアフロメーター
エアフロメーターの新旧。どちらにも AIR FLOW METER B6S1 13 215A の刻印がある

🔴 それでも、ECUは容疑者として名前が挙がり、テスト用の個体まで用意されていました。犯人ではなかった。けれど「疑う価値のある部品」として、プロがちゃんと構えていた。そのことが、私の頭に残りました。

もうひとつ、このとき知ったことがあります。直したエアフロメーターも、新品では手に入りませんでした。

  • 新品の定価 72,340円(税別) / ただし生産中止
  • 店にあった中古品で 25,000円(税別)+交換工賃・テスト・点検料

🔴 定価が分かっていても、買えない。これが30年ものの現実でした。直すには中古を探すしかない。このあと私がECUを中古で買うのも、同じ流れの中にあります。

🔴 それでも、その6日後に私はECUを交換しています。

犯人ではないと分かった部品を、わざわざ換えたことになります。理屈で言えば不要です。

ただ、調べているうちに「ECUのコンデンサーが古くなると、走行中に止まることがある」と知ってしまいました。私はその1か月前に、実際に走行中に止まっています。原因は違ったとしても、同じ症状を起こしうる部品が、30年ものの中古のまま載っている。それが落ち着かなくなりました。

そこで、ネットでコンデンサーを交換済みのECUを買いました。「日本製電解コンデンサ交換済 ノーマルECU MT車用」という触れ込みで、20,000円。これから積むのは、その個体です。

路上で止まる経験を一度すると、こうなります。次に止まるのが怖いのではなく、次に止まったときに「あそこを換えておけば」と思うのが嫌になる。

錆びたボルトの外し方を探す前に、まず回してみた

ロードスターのECUは、助手席の足元にあります。カバーを外せば、すぐそこに見えます。

そのカバーを止めているボルトが、錆でびっしり覆われていました。

手持ちの工具をかけて、回そうとしました。びくともしません。力を入れてもだめ。角度を変えてもだめ。

この時点で、選択肢は3つありました。

  1. 専用の工具を買う。固着したボルトを掴んで回すための道具は、ちゃんと売っている
  2. 店に持っていく。頼めば外してくれる
  3. 壊して取る。ボルトそのものを潰してしまう

2番は見送りました。この程度で人に頼むのか、という気持ちがありました。そして1番と3番を、順番にやっていくことになります。

🔴 順番に手を尽くしたのに、どれも効かなかった

まず、バイスプライヤを持っていました。ボルトの頭を万力のように挟んで固定し、そのまま回す工具です。ストレートの SVP-125

ストレート SVP-125 のバイスプライヤ(ロッキングプライヤ)
手持ちのバイスプライヤ。ストレートのSVP-125。挟む力は十分あったが、ボルトは動かなかった

これで掴んで回しました。動きません。挟む力は十分あるのに、ボルトのほうが微動だにしない。

次に調べているうちに「温めると緩む」という話を見つけました。金属は熱で膨らみ、冷えるときに縮む。その動きで、噛み込んだ錆が崩れて緩む。理屈は通っています。

そこでバーナーを買いました。SOTOのトーチです。ガスを詰めて、狙ったところだけを炙れるもの。これが、結構いい値段でした。

固着したボルトを炙るために買ったSOTOのトーチバーナー
「温めると緩む」と読んで買ったSOTOのトーチ。結果を先に書くと、あまり役に立たなかった

炙りました。冷ましました。もう一度掴んで回しました。

🔴 あまり役に立ちませんでした。

まったく効かなかったとは言いません。ただ、これで緩んだという実感はありませんでした。買ったばかりのバーナーを手に持って、ボルトを見ているだけの時間がありました。

そして、そのバーナーは結局この日にしか使っていません。いい値段のものを買って、1回だけ使って、それきりです。

ボルトの固着に負けて、ドリルで穴を開けて破壊した

最後にやったのは、これです。

  • 🔴 ボルトの周りに、ドリルで穴を開けまくる
  • 穴が並ぶと、そのぶん 金属が減って、噛んでいた力が抜けていく
  • そこまでやって、ようやく緩んだ

「ボルトを一発でぶち抜く」のではありません。周囲に穴を開け続けて、少しずつ食い込みを崩していく作業です。文章にすると3行ですが、これだけで午前中が消えました。

まず、ドリルの刃が滑ります。ボルトの頭は丸いので、真ん中に穴を開けようとしても、刃が横へ逃げていきます。ポンチで先に窪みを付けておかないと、いつまでも滑り続けます。

次に、足元が狭い。助手席の足元にドリルを持ち込んで、下向きに、しかも真っ直ぐ押し当てる姿勢が作れません。体をねじって、腕だけで支えることになります。

そして、周りに傷を付けられません。ボルトの周囲は車体です。刃が逃げれば、そのまま床を削ります。

🔴 「壊して取る」というのは、乱暴なようでいて、いちばん気を遣う作業でした。回して外すのは一瞬ですが、壊すほうは、削っている間ずっと手元を見ていなければなりません。

積載車の荷台に置かれたNAロードスターのECUと、錆びた取り付けステー
ECU本体と、一緒に外れてきた取り付けステー。この錆が、半日を持っていった

これから錆びたボルトを外す方へ|工具を買ったほうが早い

終わってから言うことではありませんが、正直に書きます。

ボルト数本のために工具を買うのは、高くありません。私が惜しんだのは数千円で、失ったのは半日です。時給で考えるまでもありませんでした。

やり直せるなら、こうします。

  • まず浸透潤滑剤をかけて、時間を置く。吹いてすぐ回すのではなく、前の晩にかけておく
  • それでも動かなければ、掴む工具を買う。ボルトの頭を食い込ませて回す道具がある
  • ドリルで壊すのは、その2つを試したあと

私は1つめだけを飛ばしました。掴む工具は使い、バーナーは買って炙り、最後にドリル。いちばん安くて、いちばん待つだけの工程を飛ばしていました。

ボルトを舐めた・折れたときの取り方と、ネジの固着の外し方

そもそも、なぜ錆びたボルトは回らなくなるのか。

錆は、鉄が酸素と結びついたものです。錆びると体積が増えます。ボルトのネジ山と、相手側のネジ穴。そのわずかな隙間で錆が膨らむと、二つが互いを押し合って動かなくなります。固まって「くっついた」のではなく、膨らんで「詰まった」状態です。

だから力任せに回すと、こうなります。

  • ボルトを舐める。頭の六角が丸くなって、工具がかからなくなる
  • ボルトが折れる。頭だけ取れて、軸が穴の中に残る。こうなると取り方は一段面倒になる

私のボルトは、幸い折れませんでした。頭を削り落としたので、軸は掴んで抜けました。穴の中で折れていたら、その日には終わっていません。

固着したネジの外し方には、順番があります。飛ばしたものから順に、代償が大きくなります。

  1. 浸透潤滑剤をかけて、待つ。吹いてすぐ回すのでは意味がありません。隙間に入るまで時間がいります。前の晩にかけておく
  2. 叩く。ボルトの頭を軽く叩いて、詰まっているものに衝撃を入れる
  3. 掴む工具を使う。舐めた頭に食い込ませて回す道具があります。数千円
  4. 削る・壊す。ドリルで頭を落とす。ここまで来ると、車体を傷つけない配慮が要る

私がやったのは 3 → 2 → 4 の順です。掴む工具(バイスプライヤ)で回し、だめなのでバーナーで炙り、それでもだめでドリルに行きました。

🔴 飛ばしたのは1つだけ。「浸透潤滑剤をかけて、一晩待つ」です。

数百円で、やることは吹いて置いておくだけ。いちばん安くて、いちばん手間がかからない工程を飛ばして、数千円の工具と、いい値段のバーナーと、半日を使いました。

なぜ飛ばしたか。待ちたくなかったからです。浸透潤滑剤をかけて一晩置くというのは、その日の作業がそこで終わるということです。せっかく休みを取って、工具を並べて、やる気になっている。そこで「今日はここまで」と言えませんでした。

結果として、半日を使いました。一晩待っていれば、翌朝の30分で終わっていたかもしれません。これは分かりません。ただ、試していないので、いまでも分からないままです。

ロードスターのECU修理と、対策品への交換はどう違うか

ECUの持病に対しては、大きく2つのやり方があります。

  • いま付いているECUを修理に出す。基板のコンデンサーを打ち替えてもらい、戻して使う
  • 対策済みのものと交換する。すでに手が入っている個体を用意して、載せ替える

修理に出す利点は、自分の車に付いていた個体をそのまま使えることです。ECUは車ごとの学習値を持っているので、その意味では素直です。ただし、出している間は車が動きません。

私は交換のほうを選びました。理由は車を止めたくなかったからです。通勤に使っていたので、預けて待つ日を作りたくありませんでした。

どちらが正しいという話ではありません。止められる車なら修理、止められない車なら交換。そのくらいの分け方でいいと思います。

ただ、この「止められない」が、あとでもう一度効いてきます。この記事は、そこに戻ってきて終わります。

交換したECUは、コンデンサーと腐食対策をした対策品

肝心の中身の話です。

入れたのは、コンデンサーを交換して、基板に腐食防止コーティングをした対策品です。中古のECUをそのまま載せ替えたわけではありません。

30年前の電子部品は、中の電解コンデンサーが寿命を迎えます。液が漏れれば基板を侵します。そうなってから直すより、先に打ち替えてあるものに換えるほうが安心だという考え方です。

写真の刻印は B63H、作っているのは DENSO、MADE IN JAPAN。1990年代の日本車らしい、素っ気ない金属の箱です。

写真の刻印にある通り、外したほうも、買ったほうも同じ B63H です。同じ型番の、中身だけ手が入った個体に載せ替えたことになります。

🔴 交換して走ったら、アイドリングが安定しなかった

載せ替えて、走りに出ました。

アイドリングが安定しません。アクセルを離すと回転が落ちきって、止まりそうになる。走らないわけではないけれど、信号のたびに気を遣う状態です。

🔴 その日のうちに、元のECUへ戻しました。

戻したら、症状は消えました。つまり、車の側ではなく、載せたECUの側で何かが起きている。そう考えるのが自然です。

ボルトを壊すのに半日。載せ替えて、走って、戻す。この日の作業は、差し引きゼロで終わりました。いや、ボルトが数本無くなっているので、ゼロより下です。

ECUの修理を専門業者に頼んだら、「対応が困難」と返ってきた

ここで諦めたわけではありません。私はまだ、このECUを載せるつもりでした。

理由は、この車が17万kmを走っていたからです。元のECUはいま問題なく動いていますが、30年で17万km走った中古の電子部品です。予防保守として、いずれは新しいほうに替えておきたい。

そこで、ECUを専門に扱う業者へ相談しました。買ったほうのECUを点検してもらい、不具合があれば直してもらうつもりでした。

先に条件を示されました。ここは誠実だと思いました。

  • 点検には1〜2週間程度かかる
  • 修理できるかどうかは、点検してからの判断になる
  • 🔴 点検だけで終わった場合も、点検料がかかる(3,000円程度・税別)

了承して、精密機器として梱包し、発送しました。到着の翌日には、答えが返ってきました。

内部点検の結果、修理のご対応が困難との判断に至りました。

🔴 直せない、という答えでした。点検報告書も付いてきました。

かかった費用は 4,136円(点検料3,300円+返送料836円)。これに、こちらから送った送料が乗ります。事前に「点検だけで終わっても点検料はかかる」と言われていた通りなので、何の不満もありません。

ひとつ、忘れられないやり取りがあります。相談したとき、業者からこう言われていました。

現在問題のない元のECUでしたら、リフレッシュ(予防整備的サービス)にてご対応が可能でございます。

いま動いているほうを、先に手当てするという道が示されていました。予防保守という意味では、本来こちらが本命です。

🔴 それでも、選べませんでした。元のECUを外して送ってしまえば、返ってくるまで車が動きません。点検には1〜2週間。通勤に使っている車から、2週間足を奪うことはできませんでした。

ここが、この一件の根っこだったと思います。

そもそも私が「修理」ではなく「交換」を選んだのも、同じ理由でした。車を止めたくない。だから、載せ替えるだけで済む道を選び、そのために中古のECUを買い、ボルトを壊し、不調が出て、戻した。

🔴 毎日乗っている旧車は、予防保守がやりにくい。部品を預けている間、走れないからです。「動いているうちに手を入れる」がいちばん確実なのに、動いているからこそ止められない。結局、壊れてから直すことになります。

本当に手を入れたいなら、代わりの足を用意するか、乗らない時期を作るしかありません。そこまでして初めて、予防保守という言葉が現実になります。私はそれをしませんでした。

結局、古いECUのまま手放した|2万円で買って、13,500円で売れた

そのあとこの車は、最後まで元のECUで走りました。そして2023年の秋に手放しました。

買ったECUは、手元に残りました。載せれば不調が出て、業者では直せないと言われたものです。そのままオークションに出しました。

  • 買値 20,000円(コンデンサー交換済み・MT車用)
  • 点検料と返送料 4,136円(+こちらから送った送料)
  • 1円スタートで出品 → 入札36件
  • 落札 13,500円

差し引き、1万円強のマイナスです。ここに、ボルトを壊した半日と、梱包して送りに行った時間が乗ります。

🔴 ただ、1円スタートに36件も入札が付いたのは正直おどろきました。同じことで困っている人が、それだけいるということです。「コンデンサー交換済み」で「業者チェック済み」のNA用ECUは、探している人がいる。

🔴 ECUを外したら、その下の床が錆びていた

そして、この日いちばん見たくなかったものが出てきました。

ECUの下、助手席足元の床に出ていた錆
ECUを外すと、その下がこうなっていた。防音材の際から錆が回っている

ECUの下、助手席の足元です。緑色に見えているのが車体の塗装で、その際から茶色いものが広がっています。防音材が水を吸って、その下で鉄板が錆びていました。

この日の記録に、私はこう書いています。

床の錆対策はまた後日。

🔴 この「また後日」は、結局来ませんでした。錆を落とすのが大変で、躊躇しているうちに、この車を手放しました。その顛末は別の記事に書いています。

いま振り返ると、この日はボルト1本に半日を使い、その先で車の寿命に関わるものを見つけていたことになります。目の前の作業に集中していると、大きいほうの問題は「また後日」になります。

旧車のDIYで、本当に時間を食うところ

この日で分かったことを、3つ書いておきます。

  1. 🔴 時間を食うのは、部品の交換ではなく「外すこと」。ECUの差し替えは数分。ボルトに半日
  2. 🔴 「待つ」がいちばん安い工程で、いちばん飛ばしやすい。工具は買った。バーナーも買った。飛ばしたのは、数百円の潤滑剤を吹いて一晩置くことだけだった
  3. 🔴 良い部品に換えても、良くなるとは限らない。「コンデンサー交換済み」を買っても、私の車では動かなかった
  4. バラすと、探していなかったものが見つかる。床の錆は、ECUを外さなければ見えなかった

3つめが、この日いちばんの収穫でした。DIYの記事は「換えたら良くなった」で終わるものが多いのですが、換えて悪くなることも、戻すことも、普通にあります。しかもその部品は壊れていませんでした。

3つめは、良いことでもあります。旧車の状態を知りたければ、調べるより、何か別の用事でバラすのがいちばん早い。ただし、見たくないものも一緒に出てきます。

それでも、私はこの日の作業を後悔していません。半日を使い、ボルトを壊し、載せ替えたものは戻し、1万円強を損しました。それでも、です。

この半日がなければ、この車の床がどうなっているかを知らないまま乗っていました。そして「コンデンサー交換済みのECUに換えれば安心だ」と思い込んだままでした。やってみて、そうならなかった。それが分かっただけでも、この日には意味がありました。

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