ユーノス ロードスター Vスペシャル(NA6CE)を1年ほど所有していました。2022年の暮れに買って、2023年の秋に手放すまで、ほとんど毎週なにかを直していた車です。
その中でいちばん大きかった作業が、幌の載せ替えでした。この車を買った理由の一つが「マルハのクロス幌が付いていること」だったのに、結局その幌を降ろすことになったという話です。
業者に頼めば新品で25〜30万円と言われた作業を、ヤフオクの中古品を使って自分でやりました。かかった日数は1日。いちばん時間を食ったのは、幌そのものではなくレインレールの移植でした。
そして、いちばん後悔しているのは、一人でやったことです。全塗装してあったボディに、思いきり傷をつけました。
NAロードスターの幌が、この車を買った理由だった
NAロードスターを探していたとき、この個体に決めた理由は3つありました。ブリティッシュグリーンであること、タン内装であること、そしてマルハモータースのクロス幌が付いていたことです。

純正のビニル幌ではなく、布(クロス)の社外品です。色もタンで内装と合っていて、単純にかっこいいと思いました。ネットの写真では、けっこう良く見えたのです。
🔴 ところが、現車が届いて近くで見ると、印象がまるで違いました。

縫い代のほつれがひどく、糸がぴらぴらと出ています。布なので、汚れも生地に入り込んで落ちません。
そして何より効いていたのが、前のオーナーが補修した跡でした。

接着剤か補修材か、黄色く変色したものが何か所も。タン色の生地に黄色いシミなので、遠目にもよく分かります。直そうとした跡が、直す前より目立ってしまっている状態でした。

真上から見ると、細かいほつれが全面に散っています。縫い目に沿って一直線に接着剤が引いてあるのも分かります。おそらく、縫い目から水が入るのを止めようとしたのでしょう。
🔴 買った理由が、買ったあとに裏返りました。いい幌が付いているつもりで買ったのに、その幌がいちばんみすぼらしい部分になってしまったのです。
ひとつ、はっきりさせておきます。これはマルハの幌という製品の評価ではありません。私が買ったのは30年落ちの中古車で、この幌が何年使われてきたのかも分かりません。ほつれも、汚れも、黄色い補修跡も、前のオーナーの使い方とその手当ての結果です。新品がどうだったかについて、私に言えることは何もありません。
言えるのは「よく効くブランドの名前が付いていることと、いま自分の目の前にある一枚の状態は、別の話だった」ということだけです。
ロードスターの幌交換費用|新品純正はディーラーで30万程度
近所のロードスター専門店で、新品の純正に交換したらいくらかを聞いてみました。返ってきた答えは「一声、25万〜30万」。30万程度は見ておくようにという話でした。
内訳を分けて考えると、こういうことになります。
- 幌本体(ガラスウィンドウ付き)が十数万円
- それに骨の点検・錆落とし・塗装が乗る
- そして脱着の工賃が乗る
幌交換の値段は、車種・年式・幌の種類で大きく変わります。ネットを見ていても、数万円で済んだという例から20万円台まで幅がありました。私が聞いたのは「NAに、新品の純正を、骨まで含めて入れるなら」という前提の数字です。
幌交換の費用は、だいたいこの3つで決まります。
- 幌そのもの(新品純正/新品社外/中古)
- 骨(フレーム)まで替えるか。骨付きかどうかで金額が変わる
- 誰が付けるか(ディーラー/専門店/自分)
🔴 私が選んだのは「中古の幌を、骨付きで買って、自分で付ける」という、いちばん安い組み合わせでした。そのかわり、時間とボディの傷を払っています。
🔴 問題は、その金額が車両本体の値段に対して大きすぎたことです。30年前の車を買って、屋根にもう一台分の予算を足す気にはなりませんでした。
中古で安い幌を探す|ロードスターにNB純正を載せた(熱線付き・骨付き)
そこで中古を探しました。ヤフオクを見ていて出てきたのが、マツダ純正のビニル幌です。社外のクロス幌から、純正に戻す形になります。
条件としては、かなり良いものでした。
- ガラスウィンドウ・熱線付き。NAの初期はビニールの窓なので、これだけで格上げになる
- 骨付き。幌の骨組みごと出品されていた
- ビニル(塩ビ)なので、クロスと違って汚れが表面で止まる
骨付きだったのが大きかったです。幌だけを買うと、自分の車から骨を外して、そこに幌を張り直す作業が発生します。これは素人には荷が重い。骨ごと替えられるなら、載せ替えるだけで済みます。

ブルーシートの上に並べたところです。手前が降ろしたマルハの幌(裏返しているのでタグが見えます)、奥がこれから載せるもの。こうして並べると、幌というのは「布」ではなく「骨と布とガラスの組み立て品」だとよく分かります。
ひとつ正直に書いておくと、純正であることは確かですが、NA用かNB(2代目)用かまでは、私にははっきり分かりませんでした。「恐らくNBの純正、熱線付き、骨付き」という判断で入札しています。結果として私のNAには問題なく載りましたが、買う前に採寸して確かめたわけではありません。ここは運が良かった部分です。
幌を外すと、ここまで開く

幌を降ろした状態です。シートの後ろから荷室の前まで、ごっそり開きます。ピンク色に見えているのが防音材、その下の緑がボディ色の鉄板です。
作業としては、内側のトリムを外し、幌の前端をフロントヘッダーから外し、左右の付け根のボルトを抜いて、骨ごと持ち上げる、という順番です。ボルトの本数自体は多くありません。
🔴 ただし、こうして順番が書けるのは終わったあとだからです。やっている最中は、ずっと手探りでした。手元に整備書があるわけでもなく、みんカラの作業記録とYouTubeを見ながら、「ここを外せば次が見えるはず」で進めています。
外す前に写真を撮る、外したボルトは付いていた場所ごとに分けて置く。やったのはその程度の用心ですが、これをしていなければ戻せなくなっていたと思います。
🔴 ただ、開けたら開けたで、見たくないものも見えます。この防音材の下から錆が出てきて、それはそれで別の悩みになりました。その話は床の錆の記事に書いています。
付け根のあたりには落ち葉や砂が溜まっていました。オープンカーは屋根の内側に水の通り道があり、そこにゴミが溜まると流れなくなります。幌を降ろす機会は、この掃除をする唯一の機会でもあります。
🔴 一人でやって、全塗装したボディに傷をつけた
ここが、この作業でいちばんの失敗です。先に書いておきます。
幌は、骨ごと外すと車の幅いっぱいの大きさになります。そして、これが結構重い。布だけならともかく、鉄の骨組みとガラスが付いた組み立て品です。片手で支えられるようなものではありません。しかも持つ場所によっては、ぐにゃりと形が変わります。
それを一人で、車体の上から持ち上げて、外へ抜きました。案の定、ボディに当てました。
🔴 しかもこの車は、買った時点で全塗装されていました。私が金をかけたわけではありません。前のオーナーか売った店が、そこまでやってくれていた個体です。
30年落ちのNAで塗装がきれいというのは、それだけで大きな価値です。実際、幌がみすぼらしくても車全体がそれなりに見えていたのは、塗装のおかげでした。
🔴 つまり私は、期待して買った幌には裏切られ、期待していなかった塗装のほうに助けられていた。それなのに、その塗装を自分の手で削ったことになります。幌代が浮いたと喜んでいる場合ではありませんでした。
降ろすときも載せるときも、幌は車体の上を通ります。持ち上げる・支える・抜くを一人でやると、必ずどこかで車体に接触します。両手が塞がっているので、当たりそうになっても避けられません。
二人いれば、まったく違う作業になります。左右で一人ずつ持てば、水平のまま真上に上げて、そのまま横へ抜けます。難易度の問題ではなく、手の数の問題です。
やり直せるなら、私は誰かに声をかけて、ボディに毛布を掛けてから始めます。費用はゼロです。それをしなかったことだけは、今でも悔やんでいます。
いちばん大変だったのはレインレールの移植だった
幌の載せ替えそのものより、はるかに手こずったのがここです。
レインレールというのは、幌の後ろ側の内側にある雨樋です。幌の表面を流れた水を受けて、車体の左右にある穴から下へ落とすためのもの。ここが壊れていると、水は車内に落ちます。
🔴 手に入れた中古幌のレインレールは、バキバキに割れていました。中古で買う以上、ここは覚悟していた部分でもあります。年数が経つと樹脂が硬化して、畳むたびに割れていくからです。
幸い、自分の車から降ろした幌のレインレールは生きていました。そこで、元の幌からレインレールだけを外して、中古幌に移植することにしました。
これがえらく手間でした。理由は単純で、レインレールは幌の生地に「接着」と「リベット」で留まっているからです。ネジで留まっているなら外して付け替えるだけですが、そうはなっていません。
- 古い接着剤をはがす。生地を傷めないように、少しずつ
- リベットを1本ずつ潰して抜く
- 移植先の幌の位置を合わせる(ここがずれると雨が漏る)
- 接着し直し、必要なところを留め直す
1日の作業のうち、体感で半分以上はこの作業でした。幌交換を自分でやろうか迷っている方には、ここがいちばんの山だとお伝えしておきます。幌本体の脱着は、正直それほど難しくありません。
熱線を生かすには、配線がいる
熱線付きのガラスが手に入ったのはうれしかったのですが、これは載せただけでは温まりません。当たり前の話ですが、電気を通す必要があります。

ガラスの左右に、銅色の帯(バスバー)と端子が出ています。ここから線を取り、幌の内側を這わせて、車内へ落とします。
面倒なのは、幌は動くものだという点です。開け閉めのたびに折り畳まれるので、配線を突っ張った状態で固定すると、いずれ断線します。たるみを持たせて、畳んだときにどこにどう収まるかを考えながら這わせる必要がありました。
載せ替えて、雨漏りを見る

載せ替え後です。リアガラスに横に走る線が熱線。冬の朝、ここが曇ったまま走らずに済むのは、思っていた以上に効きました。
作業のあと、水をかけて雨漏りを見ます。幌交換で本当に確認しなければいけないのは、見た目ではなくここです。特にレインレールを移植した以上、位置がずれていないかは水を流さないと分かりません。結果は問題なしでした。
出品写真では茶色っぽかったが、濡れたら完全に黒だった

これは中古を買うときの落とし穴として書いておきます。
🔴 出品写真では、もっと茶色っぽい色に見えていました。ところが実際に載せて雨に濡らすと、完全な黒。乾いた状態で日に当たって撮った写真と、実際の色は、けっこう違います。
私の場合は黒も候補に入れていたので、どちらでも良かったのですが、「タン内装に合わせて茶系で揃えたい」と思って買っていたら、がっかりしていたはずです。中古の幌を色で選ぶなら、濡れた写真も見せてもらったほうがいいと思います。
結果としては、ブリティッシュグリーンに黒い幌なので、収まりは良くなりました。少なくとも、黄色いシミが並んでいた頃よりは、ずっとまともに見えます。
3週間で縫い目が10cm裂けた。幌の補修はダイソーのタコ糸で
中古なので、当然ながら新品ではありません。載せ替えから3週間ほど経った頃、運転席側の縫い目が10cmほど、糸が切れて浮いてきました。
ここでまた業者に出していては、中古にした意味がありません。ダイソーでタコ糸と針を買ってきて、手で縫いました。
使ったのは返し縫いです。一針進んで半針戻る、あの縫い方。糸が1か所切れても、そこから全部ほどけていかない。幌のように常に引っ張られる場所では、これでないと保ちません。
白いタコ糸なので目立ちます。黒のマーカーで塗って誤魔化しました。近くで見れば分かりますが、走っていれば分かりません。
返し縫いを考えた昔の人はすごい、と本気で思いました。
ついでに、幌の止め金具(ヘッダーのラッチまわり)が錆だらけだったので、こちらも錆を落として塗装しています。幌交換は「交換して終わり」ではなく、そのあと細かい手当てが続きます。
これからロードスターの幌交換を考えている方へ、5つ
1年乗って手放した今、正直に書けることを5つ。失敗したことから先に書きます。
- 🔴 一人でやらない。幌は車幅いっぱいの大きさで、重く、形が変わります。一人だと必ずボディに当てます。二人なら水平に上げて横へ抜けます。私はここで、その車のいちばんの取り柄だった塗装を削りました
- 「良い幌が付いている」を買う決め手にしない。見るのはブランド名ではなく、その一枚の状態です。ほつれ・シミ・補修跡は、近くで見ないと分かりません
- 骨付きを探す。幌だけを買うと、張り替えという別の難物が付いてきます。骨ごとなら載せ替えで済みます
- レインレールは中古品の弱点。割れている前提で考え、元の車のものが生きているなら移植を計画に入れる。ここが作業の山です
- 色は濡れた状態で判断する。乾いた出品写真の色は当てになりません
費用については、新品を業者で25〜30万と言われたものが、中古の幌と自分の1日で収まりました。金額だけを見れば、たしかに大きく浮いています。
ただ、浮いたのは「お金」であって「手間」ではありません。接着剤をはがしてリベットを抜いている時間は、業者に頼めば発生しなかった時間です。それを楽しいと思えるかどうかが、分かれ目だと思います。
出来映えについては、まぁまぁうまくできたと思っています。プロの仕上がりと並べれば差はあるでしょう。ただ、雨は漏らず、開け閉めも普通にでき、見た目もまともになりました。1日と、中古の幌の代金で、そこまで戻せたなら十分です。ボディの傷を別にすれば、ですが。
私は楽しかったので、やって良かったと思っています。
